初心者絶対推薦盤です。
肥えた耳を持っていなくとも解り易い、親しみやすい実に素晴らしい作品で、アイク・ケベックが死を目前に残した最高の作品、遺作にして代表盤です。私はこの盤を聴く度にアイク・ケベックとケニー・バレルへの賞賛の念が絶えないのです。バップがどう、モードがどうと言うモダンジャズの類別や定義づけとは関係なしに楽しめ、全ての曲のメロディーがどんなに音楽に疎い人でも理解しうる美しさ、品格、やさしさを持っています。曲目をざっと見てみると、例えば、いきなりケベックの強烈な低音が炸裂!本作に参加しているギター奏者のケニー・バレルのオリジナルである、1曲目、「ロイエ」は、ここでヒットしたのがきっかけで3年後自身のアルバム、'65「ケニー・バレルの全貌(ギター・フォームス)」に録音する事になる話題曲。ケベックのテナーが深い哀愁を表現しています。3曲目のドヴォルザークの、「家路(遠き山に陽は落ちて)」や、5曲目、リストの「愛の夢」等、ちょっと以外ではありましたが他ジャンルでもよく演奏される伝統曲。これらの2曲をボサノヴァにアレンジし見事に成功しているアイク・ケベックの感性は普通じゃありません。ホントに良い物が何かを熟知している中年オヤジの洗練された感性とでも言いましょうか。そして個人的にお気に入りなのは、上記のどれでもなくて、2曲目、「ロロ・トゥ・ディスペディーダ」、そして、最後9曲目の「リンダ・フロール」です。これらの2曲はどういう風に良いかと言うと小さい頃聴いた事がある様な何処か懐かしい感じのメロディーで60年代に幼年期を過ごした私と同年代の人は判ると思います。う〜ん…年がばれてしまうなあ。8曲目の「ファベーラ」も当時の本場ボサノバの曲ですので、これにこそ懐かしさを感じる同世代諸氏がいるかもしれません。また、アイク・ケベックのオリジナルナンバー、4曲目、「ミー・ン・ユー」や7曲目、「ブルー・サンバ」において、演奏者としてだけではなく、作曲の才能も垣間見る事が出来ます。4曲目、「ミー・ン・ユー」は、ケベックのやさしい人柄が伝わってくるような大人のボサノヴァです。7曲目、「ブルー・サンバ」はソウルフルでけだるい感じのブルースです。と言う訳で、かなりかいつまんでしまいましたが、このアルバムには目玉曲が無く全9曲中の殆どが一見一聴(こんな表現あるのかな?)の価値ありなのです。さあ!あなたもこの盤で、濃厚な"ソウル演歌"のひとときを。
■1962年、ニュージャージーにて録音。■レーベル : ブルー・ノート■テナーサックス=
アイク・ケベック、ギター=ケニー・バレル、ドラムス=ウイリー・ボボ、シェケレ(チェケレ)=ガーヴィン・マッソー